♦ 理事長からのメッセージ


能登半島震災お見舞い





理事長 坂下英明

 この度の令和6年の能登半島震災でお亡くなりになった方々の御冥福をお祈りいたします。
 また被災された皆様の安全と被災地の一日も早い復興を祈念いたします。

2024年1月


新理事長に就任して ―夢の実現―





理事長 坂下英明

 この度、新理事長に就任いたしました。名理事長方の後任を担うことは大変名誉であるとともに重責に身のひきしまる思いです。
 さて、私は従来から他の学会を含めて活動としては、会計、査読編集、広報やHPを中心としたIT関連および各種の認定関係を担当することが多く、社会活動としては教育関係を多く担当して参りました。特に、編集長として関与してきました雑誌では、審査経過はもとより、発行前には全論文を拝読しておりました。
 このような中で、本学会の本質は「統合医療としての歯科医療を学術する」ことにあり、その範囲が「有病者」であると理解しています。特に、部位、年齢および治療手段を規定していないことが特徴で、医学に基礎を置いた歯科医療に主軸を置いて発展する学会であると考えております。
 このため、本学会の将来像について、個人的に以下のような夢を持っております。
 近年の医療の進歩にはめざましいものがあり、超高齢社会における歯科医療の対応も多岐に渡らざるを得なくなっております。このため、情報源としての本学会誌やHPのさらなる充実が求められています。本学会誌はその創設期には投稿論文数についての悩みが存在しましたが、近年は原著論文を含めて投稿数が増加し、問題が解決しつつあります。また、その論文内容も多岐に渡ってきました。それらの論文掲載のための審査過程では、最良の「根拠」を思慮深く活用するEBM(Evidence-basedMedicine)が重要であることは当然となっています。しかし、症例報告では個々の人間と向き合うための学問としてのNBM(Narrative-basedMedicine)の要素も重要です。特に、臨床心理学的な要素のある論文や、未だ治療法に考え方の幅がある症例ではその傾向が強くなります。EBMとは、医療での議論ですので、研究結果やデータだけを頼りにするのではなく、「最善の根拠」と「医療者の経験」、そして「患者の価値観」を統合して、良い医療を目指そうとするものであることを絶えず考慮している必要があります。論文の審査上でよく問題となるのは、症例報告の新規性の問題です。本学会誌の特徴から「有病者」の基礎疾患の治療やその歯科医療に新規性を求めることには疑問があると考えています。すなわち、様々な基礎疾患に配慮した安全な歯科医療が重要です。また、歯科医療中にイベントが多発した症例報告ばかりでは、歯科医療の適切性に問題が生じる可能性があります。一方、ノンイベントの症例報告ばかりでも学術性の有無が生じます。さらに同一の疾患であっても、その歯科医療への配慮は異なります。NBMとなりがちであっても、臨床医学の基礎は症例報告であり、様々な医学知識と臨床の視点を磨くために、内容豊富な多くの症例報告を拝見できることを楽しみにしております。
 一方、医療の国際化は留まることがありません。本学会においてもこの流れは必然であると考えております。このため、本学会誌の国際化、すなわち英文投稿数を増加される必要性は当然の流れです。国際化の方法としては、当初から年1回の英文誌を創設する方法、現在の本学会誌に英文投稿を認め当面は和英文誌とする方法、総説を英文依頼する方法、英文の二次出版を掲載する方法などを議論する必要があります。当面は、和英文誌とする方法が現実的なのかも知れないと夢想しています。現在、まだ新執行部内での検討が行われてはいない状態ではありますが、方向性として検討していく必要があると考えます。
 夢を夢として終わらせない。実現する方向に努力したいと考えています。会員の皆様の御協力を御願いいたします。

2023年6月
(学会誌巻頭言より)


2023 年 新年のご挨拶





理事長 今井裕

 先生方におかれましては、健やかな新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
COVID-19パンデミックから3年が経過し、日常はwithコロナへと転換しニューノーマルな生活が推奨 される一方、感染者数はなお増加傾向を示し予断を許さない状況です。また、地球温暖化に帰すると考えら れる自然災害やウクライナに象徴される世界情勢の変化など緊張した日々が続いておりますが、いかがお過 ごしでしょうか?
 このような混沌とした社会情勢のなか、当学会はお陰様で恙なく学会活動が行われていることのみならず、 更なる充実が図られ会員3,000名も視野に入って参りました。これらは全て先生方のご指導とご協力の賜物 であり、心より感謝申し上げる次第です。昨年を振り返りますと、パンデミックの経験から得られた「情報 技術(IT)」の活用に危機管理体制の向上もあり、第31回学術大会は沖縄にてハイブリッド形式で盛大に開 催され、また、学会創立30周年事業も無事乗り切ることができました。
 今年度の当学会にとっての最大課題は、新しい専門医制度の構築と運営です。当学会が(一社)日本歯科 専門医機構(以下、歯科専門医機構)に加盟し、新たな歯科専門医制度の構築に参入することを機関決定し ていることはご承知のとおりです。そして、歯科専門医機構のもと新しい総合歯科専門医(仮称)制度を、 当学会、老年歯科学会ならびに障害者歯科学会が連携して構築することが決定されたことを受け、歯科専門 医機構と3学会で協議を1年余行って参りました。現在、歯科専門医機構が提示する歯科専門医の整備指針 に沿った「総合歯科専門医(仮称)研修プログラム」等が協議されており、近い時期に先生方には協議内容 について説明ができるものと考えております。なお、歯科専門医機構は、2023年度中には新たな総合歯科 専門医(仮称)制度の構築をと考えているようですので、当学会においても、専門・認定委員会を中心とし て新しい専門医制度を始めるための準備は喫緊の課題であります。この新たな歯科専門医制度が確立し、総 合歯科専門医(仮称)として認定された場合「広告可能な歯科専門医」となることにより、当学会の社会的 評価はさらに高まることは必至であることにより、学会全体で万全の準備を整えていく必要があると考えます。
 さて、本年は3月18・19日第32回学術大会・総会が軽井沢にて開催されます。信州大学教授栗田浩 大会長のもとで充実したシンポジウム、特別講演、教育講演などが準備されています。伝え聞くに、2018年 平昌冬季オリンピック金メダリスト・現信州大学特任教授小平奈緒先生の特別講演もあるようです。どう か、お聞き漏らしの無いよう奮ってご参加いただきますようお願い致します。
最後になりますが、会員の皆様方の本年のご活躍とご発展、ご多幸をお祈りし、新年のご挨拶とさせてい ただきます。

2023年1月


コロナ禍に「メラビアンの法則」を再考する
― 笑顔と笑い声に接して想うこと―





理事長 今 井 裕

 2019 年未知のウイルスによる疾病が発生、翌 2020 年初頭にはわが国にも伝播し、世界中をあっという 間に席巻いたしました(COVID-19 Pandemic)。これまでにない経験のため、社会全体が対応に苦慮し、日 常生活は奪われ、私どもの学会も大きな影響を受け、第 29 回学術大会(大会長:足立了平先生、於:神戸) は学会史上初の紙上開催となったことはご承知のとおりです。
 そして、マスクが離せない非日常生活も 3 度目の春を迎えましたが、特に人々の移動ならびに対面の制限 を受けたことは、故郷、家族、友人などとの接点を奪い、結果、人間関係の疎遠化と孤独を招きそれぞれが色々 な想いを馳せていると聞いております。そして、直近ではロシアによるウクライナ侵攻という大事件が起き、 21 世紀という時代にこのような非人道的なことが起きるのだと世界に大きな驚きが走ると共に、感染症と は異なった意味で故郷、家族、仲間の在り方を考えさせられています。
 このような時の流れのなか、私どもの学会は創設 30 周年を迎えました。この社会環境における、学会 創 立 30 周年記念学術大会ならびに記念式典・祝賀会、引き続いての沖縄における第 31 回学術大会開催の是 非について、学会内においても色々と議論、特に対面に関わる対応について厳しいご意見もありました。様々 なご意見を傾聴しつつ、これらの企画に関係した各位ならびに執行部は社会情勢を見据え、政府の指針に 沿い慎重かつ周到に準備を進めて参りました。そして、これらの事業がこの 2 年間の非日常生活の中で実施 され、特に会うことが困難という社会環境を乗り越え、いずれも対面を交え成功裡に開催されたことは関係 各位の熱意とご努力の結果に他ならず、心から敬意を払うものであります。そして、何よりもこの機会に、様々 な場面で皆様方の満面の笑みと大きな笑い声に接することができたことは、私の大きな心の財産となりました。  ヒトがコミュニケーションを取るとき、聞き手に影響するのは、言語 7%、聴覚 38%、視覚 55%で、言 葉よりも態度や表情の影響が大きいこと(メラビアンの法則)、つまり、非言語コミュニケーションの重要 性が報告されています。対面により喜び(笑顔や笑い声)が生まれ、コミュニケーションが醸成されたこと が創造力へと繋がり、いずれの企画も成功したものと確信し、改めて「会うことの尊さ」を学ぶ機会となり ました。一方、わが国で遅々として進まなかった社会の IT 化が、この時期に大きく展開されたことも事実 です。われわれアカデミアの世界でも、学術大会をはじめ委員会等に IT 技術やデジタル技術が導入され、 いつでも、どこからでも、参加することが可能になりました。IT 化が推進されたことにより、時間そして 経済の効率化が実現したのです。この流れは、さらに強まることは必至であり、科学の恩恵を享受すること に全く異存はありません。
 つまり、今、われわれはテクノロジーと楽しむ心を育む社会が共進化するハイブリッドな新しい社会環境 に立たされてきたものと考えます。COVID-19 がもたらしたこの new normal な社会にわれわれ自身がどう 変わっていくべきか、ここでは論じませんが、沢山の笑顔と笑い声が大事である社会であり続けることを願っ て止みません。

2022年7月

学会創立30周年を迎えて


理事長 今 井 裕

 平素より当学会の運営にご理解とご協力を賜り有難うございます。また、昨年来わが国のみならず全世界を揺るがしているCOVID-19 の対応に追われています先生方に心から敬意を申し上げます。
 さて、学会創立30周年記念学術大会は昨年同様COVID-19 の影響を受けましたが、小笠原健文大会長、スタッフの先生方、そして事務局のご尽力により、当学会創立以降初めてのハイブリッド形式で開催され成功裏に終えることができました。開催に至るまで理事の先生方には多くのご意見を賜り、最終的には意見の集約を図り具現化された小笠原健文先生方には心から感謝申し上げるとともに、学会を代表し厚く御礼を申し上げます。いずれにしましても、当学会の底力を目の当たりにし、学会の益々の発展を確信した次第です。
 学会創立30周年記念事業は特別委員会 (委員長:坂下英明副理事長) を設置し、学術大会のみならず現在ふたつの記念事業を計画しております。ひとつは、創立30周年記念誌の発刊で坂下英明副理事長のもと緻密に計画が立てられ、原稿、関連資料の収集がすすんでおります。しかしながら、何分にも30年間という時空の隔たりがありますので資料等の収集は困難を極めております。先生方におかれましても、どうか資料収集等にご協力のほどお願い申し上げます。もうひとつは、記念式典・祝賀会の開催で岩渕博史理事を中心に企画がすすめられておりますが、COVID-19 による緊急事態宣言等の発出により、立案に関する協議も翻弄されております。当初、祝賀会は今秋に開催する予定でしたが、ご承知のとおりの社会状況でもあり、可能な限り多くの先生方にご出席いただけるよう来春総会に合わせ開催するよう準備をすすめているところです。日程、会場等が確定次第、改めてご案内申し上げますので、ご承知おきください。
 最後になりますが、諸先輩・会員の先生方、そして学会運営を支えてくれている事務局のご協力により、現在企画されています学会創立30周年の記念事業がCOVID-19 に負けることなく実現できますこと祈念申し上げますとともに、先生方とお会いできますこと心より楽しみにしております。

2021年9月

理事長に再選されて

理事長 今 井 裕

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、社会はこれまでに経験のない大きな変革が求められております。会員の先生方におかれましては、このような先の見えない状況のなか各方面においてご尽力されておられますこと心より敬意を払うとともに、日頃は当学会の事業運営におきまして、多大なるご理解とご協力を賜り深く感謝申し上げます。
 このたび、当学会執行部の任期満了・改選により、2021 年3 月23 日開催の理事会・社員総会にて引き続き理事長の要職に選任いただきました。2013 年3 月、初めて理事長に就任させていただいた時の基本的な方針として、健全経営を保ちながら、有病者歯科医療の学術的価値の発展を目指すことを学会の戦略・ビジョンとして掲げさせていただきました。その後、8 年間で先生方のご指導とご協力の下、多くの事業を興し、会員の立場に立った事業活動を具現化して参りました。その妥当性につきましては、自らが述べる立場にございませんので、ホームページの理事長挨拶(計15 回)に掲載された活動状況をご笑覧のうえ、その是非についてご判断いただき、問題点、改善を要する点等ございましたら事務局までお寄せいただきますようお願い致します。
 なお、懸案であった学会財政の健全化につきましては、この8 年間で会員数が600 名余から2600 名まで増加したことも相俟って、積立金を十分に確保するなど健全な事業運営を確立することができました。これも偏に、先生方のご尽力の賜物であり、衷心より感謝申し上げる次第です。
 さて、今期は学会のガバナンス強化を目的に、これまではなかった副理事長制を理事会にてお認めいただきました。お二人の副理事長には独立性の高い選挙管理委員会を除く18 委員会を二つのセクションに振り分け、それぞれのセクションのまとめ役として担当していただきます。これにより委員会、部会間の情報共有が可能となり、効率的な活動ができるものと思います。また、委員会等におきましても、次世代の学会を考慮し若手の先生を登用させていただきました。若手の先生方の熱き想いを期待しているところです。
 今期の事業活動としましては、これまでの活動をさらに推進することは言うまでもありませんが、特に有病者歯科学の構築に力を注ぎます。具体的には、臨床研究法に基づき、規則を厳格に遵守しつつ、ガイドラインや歯科診療の適応拡大に資する検討を進めます。そして、これらの学問的基盤に基づき有病者歯科医療を促進するため診療指針等の作成やデバイスの開発を行い、実地診療に還元致します。また、わが国では急速に少子高齢化が進み、総人口が減少する中、社会全体に変革が求められていることはご承知のとおりです。歯科においても、有病者歯科患者は増加の一途を辿っており、社会環境の変化に対応可能な歯科医師の養成は社会的な要請でもあることより、現在、(一社)日本歯科専門医機構(以下、歯科専門医機構)でその専門性について議論が進められております。当学会におきましても、その責務を果たすべきであると考え、歯科専門医機構における議論に参画し、社会の求める歯科の専門性(歯科専門医)確立の一翼を担う覚悟です。
 私どもの学会は本年で創設30 年を迎え、創成期から成長期へと移行して参ります。この時代の流れのなかでの学会運営は、創設時の理念と先達の教えを堅持しつつ、時代の変化に即応した活動も必要であると考えます。私はこれまで理事長として、会員のみならず社会の要請を鑑みて、学会の方向性を示し、目指すべき目標を掲げ、その目標を達成するための計画を立て、実践して参りました。今期の活動も引き続きこの考えで進めて参りますが、会員の先生方そして事務局におかれましても、有病者歯科医療学会の在り方に必須であると考える事業活動等がありましたら、遠慮なくお申し出いただきますようお願い致します。
 いずれにしましても、これらの行動目標が「絵に書いた餅」では意味がありません。これまでとおり具現化できるよう努めて参ります。本会のさらなる発展のために、また、多くの目標を達成するためにも、力を結集すべく先生方のご協力を賜りたく存じます。どうか引き続き、ご指導の程お願い申し上げます。
 末筆ながら、先生方の益々のご健勝とご活躍を祈念申し上げます。

2021年6月

― 令和3年・新たな年を迎えて ―
「昨日を想い、明日へ繋ぐ」

理事長 今 井 裕

 新春の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。また、平素は当学会の活動に対し、多大なご理解とご協力を賜り心より感謝申し上げます。

 昨年はCOVID-19という100年に一度とも言われる災厄にわが国のみならず世界中が見舞われ、人々の日常が奪われた大変な一年となりました。私どもの学会もご承知のとおり学会活動の根幹をなす学術大会の開催に大きく影響を及ぼし、遂には(一社)日本有病者歯科医療学会創設以来初の紙面開催を余儀なくされました。2年に渡り準備をしてこられました大会長足立先生をはじめ関係各位のお気持ちを考えますと、今も断腸の思いで一杯です。

 そして、時の移ろいは速く新しい年を迎えました。しかし、COVID-19の勢いはなお衰えず、遂には2回目の「緊急事態宣言」が発出されることになりました。

このような社会状況を鑑み、第30回日本有病者歯科医療学会学術大会(大会長小笠原健文先生、町田市民病院口腔外科部長)は例年とは異なる7月2日(金)~4日(日)に開催することとなりました。本年の学術大会は第30回という一つの節目に開催されるものですので、学会の総力を結集し、これまで先達により構築されてきた有病者歯科医療を基盤とした次世代型の有病者歯科医療の構築に繋げたいと考えております。開催時期の変更には色々なご意見をいただきましたが、従来の発想に囚われない有病者歯科医療学会の新たな旅立として捉え、われわれが次へ向かう大きな一歩となるよう努めたいと存じます。

 さて、有病者歯科医療学会は、先生方のご指導により大きく成長を続けておりますが、今を生きる者にとりまして、当学会を如何に次世代に繋いでいくかは大きな責務であります。私見ながら、今後われわれが向かうべきふたつの道を以下に挙げたいと思います。

1. 有病者歯科医療を有病者歯科学へと繋ぐ
 現在、歯科の専門性が議論されていることはご承知のとおりです。われわれが専門と する有病者歯科医療もその遡上に上がってくるものと存じますが、歯科学の基本領域と言われる学問と比べわれわれの専門とする領域はエビデンスベースが少ないことは歪めません。日本歯科医学会専門分科会への認証申請した際も、それが理由で何度か苦渋をなめたことが思い出されます。今後、有病者歯科医療がきちんとした専門領域として認知されるためにも学問として精度を上げなければならないのです。幸いに、現在は若手の先生が色々と学術的なご努力をされておられますので、私としましてもこれを支えさらに発展させていきたいと思います。

2. 学会運営の健全化を繋ぐ
 先生方のご尽力により、当学会は順調に運営され、他学会と比較しても比較的廉価な 会費にも関わらず健全経営の状態にあります。しかしながら、経済の低迷に加え、今回のCOVID-19のような大災害ともいえる社会状況に何時陥ってもおかしくない不安定な社会環境になって参りました。つまり、従来の様に右肩上がり時代の運営方式は、時代にそぐわなくなってきたと考えます。COVID-19により新しい生活様式が求められると共に急速に社会のIT化が進み、われわれの会議もWeb会議が導入されるなど、大きな変化が押し寄せております。従来のわれわれの考えからは大きな乖離があるものの、社会の合理化には一定の役割を果たしているようです。勿論、全てがIT化で解決出来るものではありません、特に創造性が必要なものに対しては学問的にもITでは難しいということが判明しているようですので、この新しいツールを上手く活用し、従来の大事なものは残しつつ学会運営の合理化を進め、次世代へ健全な学会運営を繋ぐ必要があると考えます。

 新年早々の随感随筆で申し訳ありませんが、個々の事例でも多くの「昨日を想い、明日へ繋ぐ」ことがございます。本年は、それらにつきまして先生方には機会あるごとにご案内させていただきますので、忌憚なきご意見を賜り、当学会の更なる発展に繋げたいと存じます。

 末筆ながら、先生方の益々のご健勝と当学会の活動が国民の健康保持に寄与することを祈念申し上げ、年頭のご挨拶といたします。

2021年正月

新型コロナウイルス感染症を考える
―コロナ禍における当学会の対応を検証し、今後の対策を思惟する―

 仲秋の候、皆様におかれましてはコロナ禍にあってもますますご清栄のことと、お慶び申し上げます。また、平素より当学会の活動にご理解とご協力を賜り、深く感謝申し上げます。
 はじめに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患された皆さま、および関係者の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。そして、「令和2 年7 月豪雨」 によりお亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、被災された方々に謹んでお見舞い申し上げます。
 さて、COVID-19 の蔓延により我が国のみならず世界中のあらゆる国・地域で社会的混乱が惹起され、現在もなお社会のみならず個人としても対応が求められており、本学会の活動にも大きな影響を及ぼしていることはご承知のとおりです。そこで、理事長の立場で当学会におけるCOVID-19 に対するこれまでの対応ならびに今後の考え方について述べさせていただきます。


1.学術大会・総会について
 正月気分も抜け今年度の学術大会・総会の準備が佳境に入る頃、COVID-19 が社会問題として取り上げられて参りました。当然のことながら、医療系学術団体である当学会においても喫緊の課題として、学術大会・総会への対応が求められました。学術大会は学会の基盤をなす大きなイベントのひとつであること、これまで2 年間準備を重ねてこられた大会関係者のご努力と想いを大切にすること、そして、慣例として学術大会の運営は基本的には大会長に委ねられてきたこと等より、小職としましては大会長との連携を第一義に考えるとともに、主たる医療系学術大会の開催状況を調査いたしました。その結果、その時点におきましては本学会の数倍規模の医学系学会も開催する方向でしたので、企画の変更に含みを残し開催の方向と判断いたしました (令和2 年2 月20 日ホームページ・HP 参照、以後令和2 年は省略)。
 しかしながら、2 月26 日午後政府より新型コロナウイルスの感染拡大に鑑み、すべてのイベントに対して延期、縮小するようにとの強い要請が発出されたことより、事態は急転回いたしました。すなわち、この要請を受け即座に大会長と相談の上、総会・学術大会についてはとりあえず中止 (もしくは延期) せざるを得ないと判断し、物理的な余裕もないことより常任理事への報告の上、同日にご案内申し上げた次第です。学術大会・総会開催直前の変更により混乱が生じ、会員諸氏には多大なご迷惑をお掛けしましたことをこの紙面をお借りし深くお詫び申し上げます。
 なお、大会延期と判断いたしましたが、大きな問題として学術大会に併催される総会をどのようにするのか、定款との整合性を図る必要性があり、まず弁護士、司法書士の先生方とご相談致しました。結果、コロナ禍の状況は天災に匹敵するものと考えられ、法律に定められた総会の開催時期については特例として免除されることが法的にも担保されましたので、会員諸氏に学術大会ならびに社員総会に対する対応についてご案内申し上げました (3 月18 日)。そして、引き続き中止 (延期) とした学術大会につきまして、今後どのように対応するか検討に入りました。基本は大会長の意向を踏まえることとしつつも、これまでに経験のない事態であること、しかも迅速な意見交換が必要なことより、理事長から直接各理事の先生方へ議題等をご案内し、協議戴くという通常とは異なる理事会形式で実施致しました。理事会は電磁的方法で行い、その結果、学術大会・総会は 7 月 17 日( 木) 〜19 日( 日) 神戸にて延期開催としたところです( 4 月13 日)。
 しかし残念ながら、COVID-19 の拡大は収まらず、4 月7 日には政府から緊急事態宣言が発出されるなど、社会情勢がさらに混沌として参りました。幸いにも、国民の努力により5 月25 日緊急事態宣言は解除に至りましたが、宣言解除後も同疾患の患者数は増加するなどCOVID-19 終息の目途は立たず、第2 次・3 次再感染に対する注意喚起があったことはご承知のとおりです。このような経緯の中で、大会長と相談の上、会員の安全確保そして学会の社会的責務という観点から、第29 回学術大会の開催形式を紙面開催へと変更することとし、先に述べた同様の方法により理事会へ報告のうえで再度ご案内いたしました(令和2 年6 月5日)。なお、これらの決定につきましては、後程開催された理事会、社員総会にて追認されましたこと申し添えさせていただきます。いずれにしましても、足立大会長が断腸の思いで決断されたこと、そして関係諸氏のお気持ちを考えますと言葉もありません。足立先生ならびに関係各位のご英断に心からの敬意と感謝を申し上げる次第です。
 以上が、第29 回学術大会・総会開催に関する経緯ですが、その間の対応に多くのご意見を賜りました。大変貴重で建設的なご意見を沢山お寄せいただきましたこと心よりお礼申し上げます。また一方で、大会長ならびに小職の対応についてのご批判、ご叱責も頂戴いたしました、これはひとえに小職の至らなさであり、深くお詫び申し上げる次第です。今回のCOVID-19 による学術大会への対応は、これまで経験したことの ない状況で対応に難しさがありました。そのなかで小職が社会情勢の客観的判断ならびに大会長のお考えを第一義としたうえで、公的に可能な限り多くの意見を募り、公開協議の上で結論を導くという機関決定にこだわったことが、諸々の判断に遅滞を生じさせ結果として些かの混乱を招いたことがご批判の一因となったのではないかと考えております。この間における小職の会務運営の是非につきましては、会員諸氏のご判断に委ねることとしたいと存じます。
 なお、今回の経験を踏まえ私見ながら当学会における今後の検討課題を挙げさせていただきますので、可及的早期に協議して戴けましたら幸いです。
1)当学会におけるリスク管理の在り方を具体的に検討する
2)学術大会担当の実行委員会 (仮称) を創設し、学術大会へのサポート体制を確立する
3)定款で定める社員総会の役割(特に、最終決定事項)について検討する
4)事務局 (との連携) の在り方について検討する
5)その他


2.当学会におけるCOVID-19 への対応
 コロナ禍が進むなか、当学会におけるCOVID-19 に対する見解を発出すべきであるとの進言を受け、理事長からのメッセージとして 「新型コロナウイルス対策についてというタイトルで歯科の立場からの感染防止についての考えと信頼性の高い新型コロナウイルス関連サイトへのリンクを紹介致しました (3 月19 日)。これは数多くある歯学系学術団体の中でも早い対応であり、ある程度胸を張っても良いのではないかと自負しております。その後は、日本歯科医学会、日本歯科医学会連合からの情報を提供して参りましたが(3 月31 日、4 月1 日)、COVID-19 における歯科医師のPCR 検査につきましては、理事長見解とともに日本歯科医師会からの「歯科医師による新型コロナウイルスのPCR 検査の検体採取に伴うE システム (e-learning)」をご案内申し上げました (5 月26 日)。これらの詳細につきましては、当学会HP をご参照戴きますようお願い申し上げます。
 顧みますと、これらは当学会におけるオリジナルな発信ではなく、情報公開という範疇を出ていないものと反省しております。しかしながら、理事長ひとりで対応できるものでもなく今後当学会として具体的な対応策を検討しておくべきものと考えます。
 以上、思うが儘に筆を走らせました。会員諸氏におかれましては、ご笑読の上忌憚なきご意見をお寄せいただきますようお願い致します。

令和2年10月20日
理事長 今 井  裕

第29回(一社)日本有病者歯科医療学会総会・学術大会について

 会員の皆様方におかれましては、平素より当学会の活動にご理解とご協力を賜り心より感謝申し上げます。
 さてこの度、政府の要請も踏まえ、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大予防のため総会・学術集会(2月28日~3月1日、於 神戸)を中止(延期)せざるを得ない状況となりました。有病者歯科医療学会といたしましては、現在、足立大会長とともに今後の対応(延期開催)につき協議中ですので、方向性が固まり次第ご案内申し上げますのでご承知おき戴きますようお願い致します。
 また、法人法に則り学術集会時に行う予定であった社員総会では、来年度事業ならびに予算の承認等重要な案件がございましたが、開催前にこのような状況に陥ってしまったことより行えない事態になりました。現在、法律の専門家とも相談しながら、新型コロナウイルスの感染収束が見えない中、会員総会をいつどこで行うかについても併せて検討中ですので、ご理解を賜りますよう何卒お願い申し上げます。
 終わりにあたり、ご連絡が大変遅くなりましたことお詫び申し上げますとともに、会員の皆様方とともに、この苦境を無事乗り越えていきたいと存じますので、宜しくご協力のほど重ねてお願い申し上げます。末筆ながら、先生方のご健勝を祈念申し上げます。

令和2年3月18日
理事長 今 井  裕

新型コロナウイルス対策について

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応として2月26日、政府からイベント自粛要請が出されたこともあり、当学会でも2月28日から開催する予定であった総会・学術大会(神戸)を中止(延期)とする苦渋の決断をしたところです。3月17日現在、国内では、クルーズ船発生例を除き診断確定例873名となっており、クラスターの発生も確認されるなど、その増加の勢いは衰えておりません。COVID-19の特徴は、感染性(伝播性)が高く、致死率はインフルエンザよりは高く、高齢者・基礎疾患保有者においては生命を脅かす重篤な状態につながる可能性を高めると考えられています.また、軽症例が80%前後であり、感染をしても無症状である無症候性キャリアの数がどのくらい存在するのかが明らかになっていないことが大きな問題となっていることより、われわれ歯科医にとりましても、日常の診療におきまして新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染予防対策に徹底留意すべきと思われます。具体的な対応策としては、日常的にスタンダードプリコーションを徹底することが提案されておりますが、(一社)日本環境感染学会が3月10日「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド、第2 版改訂版 (ver.2.1)」を公開していますので、ここにご紹介させて戴きます。本ガイドを参考にしていただき、⽇々の業務を無事に遂⾏していただきますようお願い致します。

添付資料:(一社)日本環境感染学会が3月10日「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド、第2 版改訂版 (ver.2.1)」


なお、信頼性の高い新型コロナウイルス関連サイトへのリンクを以下に紹介致しますので、ご参照下さい.

1.厚生労働省
新型コロナウイルス感染症について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

2.国立感染症研究所
新型コロナウイルス(2019-nCoV)関連情報ページ
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov.html

3.国立研究開発法人国立国際医療研究センター
NCGM COVID-19入院患者の背景・症状・診断・治療の概要
新型コロナウイルス感染症流行時における患者・家族・職員への倫理的配慮
https://dcc.ncgm.go.jp/

4.厚生労働省検疫所 FORTH
海外感染症発生状況
https://www.forth.go.jp/topics/fragment1.html

5.日本環境感染学会
新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症への対応について
https://www.kankyokansen.org/modules/news/index.php?content_id=328

6.日本感染症学会
新型コロナウイルス感染症
https://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=31

2020年「庚子(かのえね)」の年頭に思う

理事長 今 井 裕

あけましておめでとうございます。

皆様には、健やかに新春を迎えられたことと、お慶び申し上げます。また、平素より(一社)日本有病者歯科医療学会(以下、有病者歯科医療学会)の運営に深いご理解とご協力をいただいておりますこと、厚くお礼申し上げます。

また、平成から令和となった昨年は、全国的に自然災害、異常気象が多く発生致しました。災害に見舞われた皆様には心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。

さて、歯科界に目を向けてみますと、残念ながら、多くの課題を積み残したまま新たな年を迎えたように思います。それぞれの問題点について、ここで触れることはしませんが、小職の僅かながらの経験、特に(一社)日本歯科専門医機構(以下、歯科専門医機構)に寄せられる国民代表の方々の声に耳を傾けると、その根底には信頼という問題が潜んでいると考えます。

つまり、われわれ歯科医師は患者・国民にきちんと向き合っているのか、ということが問われているもので、その解決のためには、国民の歯科医療に対する理解を高めることを前提としたわれわれ自身の合理的な行動が今こそ必要だと考えます。
有病者歯科医療学会にとりまして、昨年は意義深い年でありました。ご承知のとおり、当学会は念願でありました日本歯科医学会専門分科会への昇格が承認されました。このことは、当学会が我が国における歯学系学術団体のひとつとして確固たる地位を確立し、社会的にも認められたことになります。ここに至るまでご努力されました先達、現役員、会員諸兄、そして事務局の皆様に衷心より感謝申し上げます。この機を捉え、神戸で開催されます第29回有病者歯科医療学会総会・学術大会では、「日本歯科医学会専門分科会昇格記念大会」と冠し様々な企画が考えられております。是非、一人でも多くの先生方に参加していただき、学びと共にお祝いしていただければ幸いです。そして、有病者歯科医療学会は学術的に更なる深化を図り、当学会認定専門医の歯科専門医機構ならびに広告可能な歯科専門医の認証獲得を目指す所存ですので、更なるご指導、ご鞭撻を賜りますようお願いいたします。

超少子高齢社会が進行する中、社会全体にパラダイムシフトが求められております。歯科におきましても、厚労省から近未来型の歯科医療が提言されるなど、社会構造の急激な変化すなわち疾病構造の変化に対応可能となる、これまでとは異なる歯科医療への変化が求められています。そして、本年7月には「東京オリンピック2020」が開催されますが、2020年は干支で37番目にあたる「庚子(かのえ・ね)」の年で、始まりの意味を持つ「子」と力強さをイメージする「庚」があわさり、大きな変化が生じる1年だと考えられています。われわれに突き付けられている変化が、単なる干支(時系列)上の偶然なのか、あるいは社会的必然なのか、小職には知るべくもありません。しかし、有病者歯科医療学会は歯学系学会の中で唯一学際的な学術団体で独自性と受容力を兼ね備えた組織であり、あらゆる変化に対応可能であるばかりでなく、新たな歯科医療の構築に大きく貢献が期待されるものであります。どうか、「明日の歯科界を連れて来るものはわれわれだ!」という気概と矜持を持ち、本年の学会活動を共に進めて行こうではありませんか!

終わりにあたり、先生方の益々のご活躍とご健勝を祈念申し上げ、新年のご挨拶といたします。

2020年正月

初夢! 新しい歯科医療を創造する

理事長 今 井 裕

新春の候、時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。平素は会務の運営に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

小職が本稿に寄稿を始めて、今回で10本を数えることになります。拙文は学会ホームページ(H.P.)にも掲載され、広く一般の方にも当学会の理念、活動方針をお伝えして参りましたが、このような形式で学会の在り方等について情報公開を定時的に発信している学会は少ないものと自負しているところです。どうか、一度H.P.をご覧になっていただき、当学会最近の歩みについてご確認いただき、ご意見を賜りましたら幸いです。

さて、昨年4月(一社)日本歯科専門医機構(以下、歯科専門医機構)が設立されたことは、ご承知のことと存じますが、私はこの正月「当学会が新たなる歯科専門医制度において、重要な役割を果たすことになる」という初夢をみました。

そこで、歯科専門医機構設立の経緯を余りご存知でない方もおられると思いますので、簡単にご紹介させていただきます。歯科専門医機構の設立は、2015年厚労省内に「歯科医師の資質向上に関する検討委員会」が設置され、その検討項目の一つに「歯科医療に求められる専門性に関すること」が挙げられ、そのワーキンググループ(以下、W.G)が立ち上げられたことから始まります。協議の結果、現行の歯科専門医制度における問題点が指摘され、関係団体、学会、大学、第三者を交えた協議の場を設定し、歯科医療の専門性のあり方等につき1年を目途に、以下の項目について検討を行う必要性が示されました。
① 侵襲度の高い歯科治療やハイリスク患者へ対応可能な歯科医師の養成の在り方
② 歯科医師の自己研鑽の方策や、研修についての情報提供の在り方
③ 各学会の専門医制度について、客観的な評価方法、評価基準等の在り方
④ 近接・類似する領域における研修、認定の在り方
⑤ 国民に情報提供すべき歯科医療の専門性及び専門性資格とその評価の在り方

上記提言に基づき、(一社)日本歯科医学会連合、(公社)日本歯科医師会、ならびに有識者からなる「歯科医師専門医制度目的構築のための第三者機構設立作業部会」が立ち上げられ、協議の結果、第三者機構(歯科専門医機構)の設置は必要不可欠と結論され創設されたのです。

当学会におきましては、設立の趣旨に賛同し機関決定のうえ、機構社員に申し込み、承認されたところです。今後は、厚労省W.G.からの提言にあります内容を十分に咀嚼し、歯科専門医機構が提言する新しい歯科専門医制度の仕組みのなかで、当学会がどのような役割を果たすことが出来るのか十分に吟味するとともに、有病者歯科医療学会認定専門医(認定医)の在り方との整合性を踏まえ、検討していく必要があると考えております。そして、この正月に見た初夢が正夢になるのであれば、当学会にとり大きな飛躍の原動力になるとともに、新たなる歯科医療の構築に繋がるものと考えられますので、執行部に与えられた大きな課題のひとつであると考え、前向きに取り組みたいと存じます。

先生方におかれましては、引き続き倍旧のご厚情を賜りたく、切にお願い申し上げます。末筆ながら、先生方のご健勝を祈念申し上げます。

2019年正月

実学より智を学ぶ

理事長 今 井 裕

このたびの台風第21 号および平成30 年北海道胆振東部地震により、被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。

記録的な暑さに見舞われた今年の夏でしたが、夏のお疲れは出ていらっしゃらないでしょうか、お伺い申し上げます。また、先生方には、日頃より学会の運営にご理解とご協力を賜り心より感謝申し上げます。

さて、慶應義塾大学の創設者である福沢諭吉翁が「学問ノススメ」のなかで「実学」について述べていることは、ご承知のことと存じます。過日あるものの記事でこの実学についての議論を目に致しました。辞書をひも解くと(広辞苑・第五版)、1. 空理・空論でない、実践の学。実理の学。2. 実際に役立つ学問。応用を旨とする科学。法律学・医学・経済学・工学の類。とあるため、役に立たないものは学問ではないのか?という議論でした。曲がりなりにも、歯学を通し学問を生業としてきました小職は、興味本位に読み流しましたが、何か気になり、福沢翁が唱えた「実学」とは何かを調べてみたところ、最も簡単に理解出来る答えが、なんと慶應義塾大学の入学案内にありました。

" 自分の頭で考える" 学びへ 福澤は、「実学」に「サイヤンス」とフリガナをふりました。つまり「実学」とは、単なる実用の学ではなく「科学」のこと。問題を発見し、仮説を立てて検証し、結論を導いていくという、" 自分の頭で考える" プロセスに通じる「実証科学」のことを意味しています。以下、略

この説明から、福沢翁が唱えた実学が単に実利を求めることではないと安堵すると共に、「学問ノススメ」が書かれた時代背景を読み取ると、言葉の真の意味が理解できることも知りました。つまり、単に知っているだけということの不確かさ、危うさを学んだのです。

学問といえば、当学会は、1991 年に設立され、有病者という患者を対象にしたこれまでにない学際的領域にもかかわらず、学会名に象徴されるよう臨床を中心とした学術団体のため、これまで科学あるいは学問として未熟な団体として評価されて参りました。そのようなイメージを払拭するため、今春、有病者歯科医療に関する様々な課題について、客観的に集積された証拠(科学的根拠)に基づき解説した教科書「有病者歯科学」を上梓致しました。この作業は、これまでに経験した多くの臨床データーを集積し検証するという、まさに実証科学そのもので、福沢翁の言う実学(サイエンス)に他なりません。この教科書に掲載された検証結果は体系化された有病者歯科医療に関わる知見、知識であり、有病者歯科医療が学問となる礎になるものです。但し、有病者歯科医療が学問として深化するためには、単に知っているということだけでは、不確かで危ういものであることは、私の体験からも先にも述べたとおりです。

そこで、「知」について検索したところ、「知」とは単に知っているということ、すなわち、知識が意識のどこかに保存されていることを意味するもので、その「知」に「曰(いわく)」がついて、自分が知っているだけでなく、その知識の本質を見抜き、自分の意見として他人にきちんと説明できるということを意味する、とありました。これが事実であれば、有病者歯科学という実学を学び、その学問を基盤とした有病者歯科医療を実践する者として、単なる知識の習得のみならず、その真理を求め「智」を学び、日々の臨床に生かすことが、今われわれに求められていることではないでしょうか?この夏のある日、ふと思った次第です。

年惜しむ季節に

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

寒冷の候、先生方におかれましてはますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は会務に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

早いもので、今年も先生方それぞれの思いが残る一年が終わろうとしております。(一社)日本有病者歯科医療学会(以下、有病者歯科医療学会)における、この1年を振り返りますと、第26回有病者歯科医療学会学総会・学術大会(金沢市)が、大会史上初めて1,000名を超す参加者を得て成功裡に開催されたことは特筆すべきで、大会長の宮田 勝先生(石川県立中央病院 歯科口腔外科 科長・診療部長)には、心より敬意と感謝を申し上げる次第です。そして、この総会をもって新しい執行部がスタートし、以前にも増してスピード感をもって多くの事業に取り組み、具現化を目指しております。現在、重点的な事業としまして、1. 学会認定専門医制度の再構築(有病者歯科医療に関わる歯科衛生士の養成/学会認定制度の設立)、2. 診療ガイドラインの基盤確立と新たなガイドライン項目の作成、3. 学術教育セミナー・ハンズオンセミナーにおける大胆な企画構想、4. 日本歯科医師会と連携した在宅歯科医療に関する調査等、を推進しているところです。どうか、先生方のご理解とご協力を重ねてお願い申し上げる次第です。

有病者歯科医療の学問的基盤の確立は、当学会の存在意義に繋がるものであります。そこで、この数年有病者歯科医療に関わる教科書の作成を、学問的基盤確立の核心として捉え、取り組んで参りました。お陰様で、2018年春には「有病者歯科学」として上梓される予定となりました。この機会を緒とし、有病者医療に関する学問的根拠形成をますます深め、学術集団としての高見を目指したいと考えておりますので、宜しくお願い致します。また、教科書作成に関係された先生方には、ご多忙のところ、原稿の執筆ならびに編集等で大変なご苦労と協力を賜りましたこと、心よりお礼申し上げます。

終わりに、当学会の近未来について思い巡らせます。当学会の会員は、大学関係者(歯学部口腔外科・歯科麻酔、医学部歯科口腔外科)、病院歯科口腔外科、一般歯科(開業歯科)、その他(医師、看護師、歯科衛生士、研究者等)から構成され、それぞれの専門集団が代表として活躍されています。これは他の歯学における専門的学術団体とは異なる特徴で、本学会はまさに、(歯科)医療ネットワークの要となるものであり、現在社会が必要としている医療に不可欠な学術団体のひとつであります。われわれは社会からの負託に答えるためにも、裾野を広めつつ、社会に還元できる診療、研究、教育活動を実践し、進化し続けなければなりません。そのためには、時代そして社会が求める歯科医療と研究を洞察し、それに基づいた企画と実践力を備えた若き世代のリーダー育成が喫緊の課題であると、年惜しむ季節に老婆心ながらしみじみと感じている次第です。

末筆ながら、先生方の益々のご活躍と、来る年のご健勝とご多幸を祈念申し上げます。

繋 ぐ
― 伝受から伝授へ -

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

日頃より当学会の運営にあたりましては 、先生方をはじめ事務局の皆様方から暖かいご支援とご協力を賜り、心より感謝申しあげます。

本学会は1991年4月正式に学会として発足し、2010年12月には法人認可を受け、「全人的歯科医療」を基本的な考えとして据え、有病者歯科医療に関わる各種事業を運営して参りました。そのような中、私は4年前当学会理事長に推挙され、先生方のご指導のもと、次世代への橋渡し役として、その重責を担って参りました。そして、本年3月金沢で開催されました理事会において、三度理事長として推挙され、同日社員総会にて承認を得た後、3月3日付けで理事長に就任いたしました。学会発足から26年が経過し、社会構造も大きく変遷するなかで、当法人を取り巻く環境は決してやさしいものではありません。私は多くの課題を抱えているなか、超少子高齢社会における国民の歯科医療に対する要請に応えていくことが、当学会の最重要課題であると認識し、これまでの4年間学会運営に努めて参りました。この度、さらに次の2年間理事長という重責を担うことになり、改めてその職責の重さに身の引き締まる思いであります。

今後2年間の活動方針は、従前からの事業の継続と発展を基本として、以下の項目を推進していきたいと考えておりますが、ご意見等ございましたら事務局までいただきますようお願いいたします。

1. これまでの「行動目標」の一部を「結果目標」へ融合させる
  1)有病者歯科医療の知識とスキルを啓蒙する
   ①認定医制度の更なる整備
   ②学術教育セミナー
   ③スキルアップセミナーの実施(日本歯科医師会との連携協議)
2. 行動目標の更なる深化を目指す
  1) ガイドラインの策定
   ①既存のガイドラインの改定
  ※②疾患別ガイドラインの新規作成
  2) 高度な学術的基盤と最先端の医療水準の構築
   ①教科書の上梓
   ②専門分科会への加入申請
 ※3) 学会を構成する各部門の整備と活動の強化
  4) 日本歯科衛生士会との連携
   (有病者歯科医療学会認定歯科衛生士の創設)
 ※5) 学会の在り方ならびに人材の育成と確保
  6) その他

これらのうち、何点か新規(※下線部)の行動目標を設定致しました。先生方のご理解を賜り、一歩でも先に進めることが出来るよう取り組み、有病者歯科医療の発展と活性化に貢献したいと思います。

終わりに当たり、今後とも、先生方の思いに沿った学会運営を目指します。そして、先達から伝受されたものを次なる世代へ伝授する、つまり繋ぐことが、私が果たすべき大きな役割と理解し、新たなる(有病者)歯科医療の創設に努力する所存です。どうか、引き続き指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

年の瀬そして新年を迎えるにあたり
― 時の移ろいに想うこと ―

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

先生方におかれましては、日頃より学会運営にひとかたならぬご指導とご協力を賜り、誠にありがとうございます。お陰様で、(一社)日本有病者歯科医療学会(以下、学会)は順調に発展を続け、最近では会員の著明な増加がみられるなど、社会的にも評価の高まりがみられております。これもひとえに先生方のご尽力の賜物と心より感謝申し上げる次第です。

さて、年の瀬を迎えた今、私はこの1年間の出来事に思いを馳せながら、筆を走らせております。この時期は、恐らく先生方も想いはそれぞれ異なるものの、同様な思いで日々を過ごされているものと推察いたします。そして、このニュースレターが先生方のお手元に届くのは、時は移ろい、年も明けて生活の落ち着きが戻り、現執行部が2期目の最終段階を迎える頃だと存じます。
現執行部は、これまでの先達が作り上げられました大きな財産の下に、現在の社会環境に相応した事業を行動目標に挙げ、その具現化を目指して参りました。そこで、2期4年を終えるに当たり、これまでの活動状況についての総括と学会の近未来構想について述べさせて戴きます。

これまでに、われわれが掲げました行動目標は以下の通りですが、これらの項目をスピーディーに具現化することを目標に活動して参りました。お陰様で、多くの先生方、事務局のご尽力で、全ての項目で大きな進展がみられたものと考えております。

1、ガイドラインの策定
2、有病者歯科医療の知識とスキルを啓蒙する
 ①認定医制度の更なる整備
 ②学術教育セミナー
 ③スキルアップセミーの実施
3、高度な学術的基盤と最先端の医療水準の構築
4、日本歯科医師会との連携協議 
5、医科歯科連携の強化(25周年記念シンポジウムの開催)
6、歯科衛生士との連携(有病者歯科医療学会認定歯科衛生士の創設)
7、その他

これらについての、現状と今後の到達目標について記します。
1、2、につきましては、ご承知のとおり、既に実施されていますが、2、については、超高齢社会に伴う疾患構造の変化に対応すべく、さらなる深化を目指します。
3、有病者歯科医療の学術水準を担保するため、教科書を来年の早い時期に発刊することを目途に、現在原稿の校正に入りました。さらに、教科書の上梓後には、本書を基本に、安全で適切な有病者歯科医療体制構築のためのエビデンス作りを目指します。
4、日本歯科医師会と2-③をベースにした連携体制を構築致しました。今後は、医療    安全を含めた講演会とスキルアップセミナーを各県歯と連携のうえ実施し、社会構造の変化に対応可能な歯科医療の提供に、さらなる責務を果たしていく所存です。なお、学会認定医、専門医・指導医の先生方におかれましては、本事業の実施に当たりましては、特段のご協力をお願い致します
5、25周年記念事業として、2017年1月14日(土)医科歯科連携シンポジウムを(一 社)骨粗鬆症学会、(一社)骨代謝学会と連携し開催致します(詳細には、ホームペ ージをご参照ください)。なお、今回のシンポジウムを契機として、さらなる医科歯 科連携を深化させる仕組みを目指します。
6、(公社)日本歯科衛生士会(以下、歯科衛生士会)と協議のうえ、現在「有病者歯科 医療学会認定歯科衛生士」の創設へ向け、研修内容について検討中です。今年度中 には、一定の方向性を示し、歯科衛生士会と連携し、来年度実施を目指します。
7、社会が求めている歯科医師の養成に貢献できる学会として認知されるため、今われ われは何をすべきかを思料したうえで、方向性を類する学会と団体の在り方につい て検討致します。

以上、この4年間における行動目標に基づいた活動状況と今後の課題についてご報告申し上げました。現在、時代が我々の理念に追いつき、本学会はある意味で「時分の花」(風姿花伝・世阿弥)なのかも知れません。しかし、例えそうであるとしても、注目されることは悪いことではないと前向きに考え、この時期をチャンスと捉え、本学会が歯科医学、歯科医療のパラダイムシフトに大いに貢献するとともに、さらなる時の移ろいにも対応が可能な組織としてあり続けられよう、次世代に繋げていくことがわれわれの責務だと考えている今日この頃です。

では、先生方、良い年をお迎えください、そして、平成29年3月に金沢でお会いできますこと、楽しみしております。

再び春が来て想うこと

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

時の移ろいは早いもので、3月に開催された第25回(一社)日本有病者歯科医療学会総会・学術大会から、既に1か月半ほど経過し、美しい桜の花の日々から新緑の美しい季節となりました。幸いに、先の学術大会では参加者は700名を超し、成功裏に終えることができました。これもひとえに、大会長の日本大学松戸歯学部歯科麻酔学講座教授 渋谷 鑛先生ならびに教室員の先生方のご尽力と会員の先生方ならびに事務局のご協力の賜物と心より感謝申し上げる次第です。

さて、本学会は先達による先見の明により創造され、強い信念のもと歩み進んできたことはご承知の通りですが、今まさに時代がわれわれに追いつき、社会のニーズに対応可能な歯科関連学術団体のひとつに成長したと思うのは私だけではないと存じます。しかしながら、現在社会の進むスピードは速く、われわれが少しでも社会と向き合うことを怠れば、時代から取り残されていくことは必然です。これまで25年間に渡り先達に培われてきました本学会の使命を保ちつつ、変化し続ける社会に対応する組織作りこそが、現在われわれに与えられた使命であると考えております。

そこで、既に報告させていただいている今期における活動方針の進捗状況と先の総会で新たにご承認賜りました新たなる学会の方向性とその具現化に向けた活動につきましてご報告いたします。

行動目標
1.ガイドラインの策定
2.有病者歯科医療の知識とスキルを啓蒙する
  ①認定医制度の更なる整備
  ②学術教育セミナー
  ③スキルアップセミナーの実施
3.高度な学術的基盤と最先端の医療水準の構築
4.日本歯科医師会との連携協議
(新たに認められた行動目標)
5.医科歯科連携の強化(25周年記念シンポジウムの開催)
6.歯科衛生士との連携(有病者歯科医療学会認定歯科衛生士の創設)
7.その他

1.ガイドラインの策定につきましては、昨年3月「科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2015年改訂版」を刊行致しました。今後は、有病者歯科医療に関わる他のテーマにつきましても、ガイドラインを策定していきたいと考えております。

2.①今年度より、学会認定制度を認定医、専門医、指導医の3階建てとし、質の担保を保ちつつ、社会の要請に対応したシステムを構築いたしました。今後、高度な有病者歯科医療を担う人材育成と社会構造の変遷に伴う歯科医療環境の変化に対応可能な歯科医師の養成に努めます。
  ②学術教育セミナーは、2011年からこれまでに5回開催されてきておりますが、昨年開催されましたセミナーでは、大変嬉しいことにこれまでにない多数の応募者がありました。会場を急遽変更するなど対応致しましたが、すべての先生方のご希望に応えることができませんでした。ご迷惑お掛け致しました先生方に、深くお詫び申し上げますと共に、今年度はメインテーマを「ガイドラインを基本とした抗血栓療法患者・薬物関連顎骨壊死への歯科領域での対応」とし、大きな会場を用意し、多くの応募者にも対応できるよう準備しておりますので、よろしくお願いいたします。なお、内容の詳細は、ホームページをご参照願います。
  ③スキルアップセミナーは、後述する歯科医師会との連携を視野に、これまでに3回のセミナーを実施して参りました。希望者を募りますと、直ぐに満席になるなど、当初はその実施に些か不安がありましたが、その不安も完全に払拭され、われわれが考えている以上に、本学会の存在意義は高いものと実感させられました。今後さらに精度を高めるとともに、範囲を広げ実施していく予定です。

3.有病者歯科医療の学術的水準を担保するため、教科書の発刊に着手致しました。現在、出版社と学術的内容と執筆者の選定に取りかかっているところです。可能であれば、本年中に原稿の取り纏めを行い、来年中の発刊を目指します。さらに、この教科書を基本に最高水準の(安全で適切な有病者歯科)医療体制構築のためのエビデンス作りを開始いたします。

4.ハイリスク型歯科医療に対応可能な一般歯科医師の養成に、日本歯科医師会と連携し認定医制度やスキルアップセミナーを通して努力しています。今後も、日本歯科医師会ならびに日本歯科医学会との協議を続け、その精度を高めます。

5.学会創立25周年記念行事として、医科歯科連携シンポジウムを開催いたします。テーマとして、現在医科歯科連携が必要な疾患のひとつである「薬物療法に伴う顎骨壊死」を取り上げたいと考え、現在関連の医科系学会とご相談しているところです。内容が具体的になりましたら、出来るだけ早くお知らせいたしますので、よろしくお願いいたします。

6.予てからの懸案事項でありますが、学会といたしましては有病者歯科医療に対応可能な歯科衛生士の育成も喫緊の課題であると考えております。歯科衛生士会(学会)とも連携し、学会専門医制度との整合性を図りながら有病者歯科医療学会認定専門歯科衛生士の養成など早急に検討する所存です。

7.学会を構成する専門性の異なる団体の在り方について検討します。ここには6.で述べた歯科衛生士の在り方についても併せて検討致します。

以上、現在実施中の学会活動(概略)を記しました。可能な限り学会活動の可視化を進め、先生方からのご意見、ご批判をいただきながら会務に励んでいく所存です。そして、本学会が歯科医学・歯科医療の発展に寄与し、結果、国民の健康に貢献することの一翼を担っていきたいと心より願っているところです、どうか、一緒にがんばりましょう。

さらなる高みを目指して―ピンチをチャンスへ―

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

先生方におかれましては、日頃より(一社)日本有病者歯科医療学会(以下、学会)の活動にご理解とご協力を賜り、深く感謝申し上げます。お蔭様で本学会は発展を続けており、会員数も1,700名を超えるに至りました。それを専門領域別にみると、病院歯科、一般臨床医が占める割合が最も多くなり、社会環境の変化が反映していることが推察され、本学会が社会に果たすべき役割はますます大きくなるものと考えます。

さて、NHK朝の連続ドラマ「朝が来た」が、高視聴率を上げていると言われています。それは、幕末から明治、大正という激動の時代の中で、主人公が葛藤しながらも真っすぐに生き、困難を克服していく様を、主人公のみならずそれを支える周囲の人間模様とともに描いているものと聞いております。多くの視聴者は、様々な問題点を解決していくサクセスストーリーに共感し、沢山の拍手を送っているものと推察しますが、私は明治維新という大きく時代が変遷するなかで、それを乗り越えて新しい道を創造していくもの、その一方で大きな波に飲み込まれていくもの、などを描くことにより、われわれに様々なメッセージを発信しているのではないかとも考えています。

時代の変遷と言えば、嘗ては歯科医院に多くの患者が押し寄せていましたが、それも今は遠い昔となり、さらには歯科医院の数はコンビニエンスストアーよりも多い、などと揶揄されるようになりました。また、社会環境の変化とりわけ超少子高齢社会の到来は、医療構造にも大きな変化をもたらすと共に、2003年経団連により提唱された『第三の開国(TPP)』が、本年締結されたことは皆様ご承知の通りです。特に、この「第三の開国(TPP)」は、医療・介護の分野にも大きな影響をおよぼすものと考えられており、これらを勘案すると、歯科が置かれた現在の状況は、先に述べたテレビドラマにおける激動の時代背景と類似しているのではないでしょうか。

歯科がこの時代の変遷に伴う多くの問題点を克服することは、テレビドラマのように容易に可能となるものではありません。しかし、われわれは少なくとも大きな波に飲み込まれることなく、本学会先達のパイオニア精神を受け継ぎ、問題点と真摯に向き合い、困難を乗り越え新しい道を創造しなければなりません。そのひとつとして、超高齢社会におけるハイリスク型歯科医療への転換は、喫緊の課題です。しかも、この課題を解決するためには、従来の問題解決型の手法ではなく、現在の社会背景に相応した、イノベーション創出型でなければなりません。そこで、われわれは学会専門医制度をより充実させることにより、ハイリスク型歯科医療(有病者歯科医療)研修の場を広めることを決意し、同じ問題を共有する日本歯科医師会ならびに日本歯科医学会と連携し、新たな社会のニーズを創設するシステムを構築するために努力しています。

いずれにしましても、現在、歯科がおかれている状況は、社会的には必ずしも良い環境とは言えません。しかし、悪い点ばかりを嘆いていても仕方ありません。「肯定的な思考がモチベーションとエネルギーを高め、より良い結果を生み出す(Martin E.P. Seligman等)」と言われています。今こそ、有病者歯科医療の素晴らしい点や可能性に着目し、歯科界の更なる高みを目指そうではありませんか。

今こそが「ピンチはチャンス(Tough times bring opportunity)」なのです。

有病者歯科医療学会の新たなる旅立ちに向けて

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

月日の経つのは早いもので、私が理事長に就任して以来、早2年が経過いたしました。先生方には、その間、会務の運営にあたり多くのご指導、ご協力を賜りましたこと、心より感謝申し上げる次第です。そして、本年の役員改選にあたり、再び理事長職を拝命いたしましたことは、大変光栄であると共に、身の引き締まる思いであります。

今後2年間、引き続き(一社)日本有病者歯科医療学会(以下、有病者歯科医療学会)の発展に尽力して参りますので、よろしくお願いいたします。

さて、私はこの2年間、有病者歯科医療学会が置かれていた状況を、これまで目標としてきた有病者歯科医療の概念を実証する段階から、次なる段階へ入る時期と捉え、「新たなる有病者歯科医療の構築へ向けて」としての取り組みを進めてまいりました。

具体的には、先達の事業を継承するとともに、有病者歯科治療指針のひとつとしてガイドラインを策定や有病者歯科医療の知識とスキルを啓蒙するため認定医制度やスキルアップセミーなど、新たな環境を整備いたしました。そして、これらを基盤として、社会構造の変遷に伴う歯科医療の課題、特に超高齢社会における有病者歯科医療の在り方についての課題とその解決策を提供し、新しい歯科医療の展開を目指しているところです。

従いまして、これからの2年間はこの「新たなる歯科医療の構築」へ向け、さらなる挑戦をしていくことになります。そのためには、有病者歯科医療学会の学術的基盤の強化と人材の育成に努めるとともに、さまざまな異なる分野との連携を強化する必要があると考えます。幸いに、日本歯科医学会のご指導により日本歯科医師会との連携協議も始まっておりますので、有病者歯科医療学会のもつ知識・技術を活かし、歯科医療全体に有病者歯科医療が一般化する仕組みを構築したいと思います。

折しも、国の科学技術政策がさまざまな課題を解決するイノベーション創出型研究へ転換されたことは、ご承知のとおりです。その観点からも、われわれ有病者歯科医療学会の立場から、上記の課題解決に向けたプロジェクトを積極的に展開すべきと考えます。そして、そのためには、高度な学術的基盤と最先端の医療水準は絶対的な必要条件であることは言うまでもありません。先生方におかれましては、どうかこの点をご理解賜り、超高齢社会における歯科医療イノベーション創生の原動力となっていただきますようお願いいたします。

終わりにあたり、有病者歯科医療学会は有病者歯科医療を通じ、国民の健康維持・増進に貢献し、さらなる歯学の発展・向上を目指します。どうか、引き続き、学会活動に対するご理解、ご支援の程、重ねてよろしくお願い申し上げます。

この夏に想うこと

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

季夏の候、先生方におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
また、平素は学会運営につきまして、格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、昨年3月に理事長職を拝命し、先達の事業の継続に加え、新たな事業をいくつかご提案させて戴きましたところ、幸いにもご承認を得ることができました。

現在、それらの事業の具現化に向け関連委員会の先生方と努力しているところですので、その一端をご紹介いたします。

まず、最重要課題として位置付けております「更なる学会組織の充実」についてですが、現在の社会動態から勘案しますと、有病者歯科医療の裾野を広げていく必要があることは明白であり、われわれの学会が担う社会的責務であると認識しております。

そこで、現在、学会認定医制度を基盤としたリスクマネージメントに関する学会のサポート体制を確立し、その中で地域歯科医療の第一線で活躍されている先生方ならびに歯科衛生士の方々との連携を強めることにより、有病者歯科医療の充実を図り、結果として学会組織の発展に繋がるべくシステムの構築に努力しています。

具体的には、まず、有病者歯科医療を正しく理解して戴くために、学会に関する情報を全て開示しようとホームページのリニューアルに取り組みました。これにより、会員のみならず歯科医師会の先生方、そして、広くは国民との意思疎通が可能となり、広報活動の充実が図れます。また、新たなホームページには、各地域における学会認定医の存在を明確にするため、学会認定医マップを掲載し、有病者歯科医療に関するあらゆる点についてサポートが可能となる体制を作って参ります。さらに、従来から実施しています教育研修会のみならず、地域歯科医療とより密着した有病者歯科医療に関わるスキルアップセミナーを開催いたします。

このような事業の展開は、何よりもスピーディーに具現化することが肝要であります。

今後も、先生方のご協力を賜り、微力ながら有病者歯科医療に関する国民へ責務を果たしていきたいと考えておりますので、どうかご指導とご鞭撻のほどお願いいたします。

末筆ながら、先生方のますますのご活躍を祈念申し上げます。

2014年8月吉日

理事長に就任して

一般社団法人日本有病者歯科医療学会 理事長
獨協医科大学医学部 特任教授
今 井 裕

先生方におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。また、日頃は学会運営に多大なご協力を賜りまして感謝申し上げます。さて、2013年3月第22回(一社)日本有病者歯科医療学会社員総会にて新執行部が承認され、私がはからずも第4代目理事長職を拝命いたしました。自らがそのような任にないことを理解する程度の知恵は持ち合わせておりますので、大変恐縮するとともに光栄に存じ、ご推挙賜りました学会役員ならびに会員の諸先生方に厚くお礼申し上げる次第です。

本学会は今から22年前[1991年]、われわれの先達が将来到来するであろう高齢社会を見据え設立したことはご承知のとおりです。現在の状況を鑑みますと、今まさに時代がわれわれに追いついてきた感ありですが、その証としまして、この数年における会員数の増加は著しく、2013年3月現在の会員数は約1,200名を数え、学術大会の参加者も700名を超えるようになりました。

ここに歴代の理事長先生をはじめとする先人の卓越した先見の明に改めて敬意を払うととともに、今日の学会の盛隆が先輩方の並々ならぬご努力の賜物であることに重ねてお礼申し上げる次第です。

このようななか、私が理事長として学会運営に携わっていくわけですが、歴代理事長の先生方に習い、その様を踏襲していくことは当然であり、その上に新たなる時代に向けた方向性を示さなければいけないものと考えております。そこで、今後の具体的な学会運営に関する抱負について、若干述べさせていただきます。

今後の活動目標は、従前からの事業の継続と発展を基本としまして、以下の4項目を直近の重点目標にしていきたいと考えております。

  1. 1.更なる学会組織の充実

    今後の人口動態を考えると、現在のような大学・病院歯科のみで有病者歯科医療に対応することは困難であり、国民に対し十分な責任を果たすことができなくなることは明白です。その対応としては、有病者歯科医療の裾野を広げていく必要があり、地域歯科医療に従事されておられる先生方ならびに歯科衛生士の方々との協力が不可欠であると考えます。

    そこで、学会認定医制度を基盤としたリスクマネージメントに関する学会のサポート体制を確立し、その中で地域歯科医療の第一線で活躍されている先生方ならびに歯科衛生士の方々との連携を強めることにより、学会組織の充実を図りたいと考えております。本学会は、有病者歯科医療に関し国民へ責務を負っていると考えますので、喫緊の課題としてこの問題に取り組んでいきたいと思います。

  2. 2.学会認定医制度の更なる充実
    現在、医科では新たなる専門医制度への移行準備が進んでおり、将来的には、標榜科名にその制度が利用されることも考えられているようです。従来、医療制度の導入に際しては、医科が先行した後、それに準じ歯科に導入されてきた経緯がありますので、これからの情勢を注視しながら、まず当面は歯科医学会専門分科会への昇格に努力し、現行の制度化における専門医認定学会(厚労省認定)を目指したいと思います。
  3. 3.学会運営の更なる充実
    現状に合わせた各種委員会の見直しを行い、学会運営の機能的向上を図ります。また、次世代に学会をどのように繋いでいくか、真剣に考えなければいけない時期でもあります。
    変わることにより、時を無限に繋げることができることになるわけですので、有能な若手の先生を学会運営に登用し、学会運営の更なる充実を図りたいと存じます。
  4. 4.学術大会と教育研修会の更なる充実
    学術大会と教育研修会は、本学会の根源をなす事業活動であります。教育研修会には既に委員会が設立され、活発な活動が行われておりますが、学術大会の運営に関しましては学会長に一任してきた経緯があります。今後は、学術大会ならびに教育研修会の両者に共通した運営委員会(仮称)を設立し、その運営をサポートできるような体制を作り、活発な活動に繋がるようにしたいと思います。

いずれにしましても、今後会務運営を円滑に行うためには、先生方のご協力なくしては実践することはできません。私も誠心誠意努力する所存ですが、先生方におかれましては、これまでにも増してご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

末筆ながら、先生方の益々のご活躍と貴施設のご発展を祈念申し上げ、大変雑駁ではありますが、私の理事長就任のご挨拶とさせていただきます。