♦ 理事長挨拶

実学より智を学ぶ

理事長 今 井 裕

このたびの台風第21 号および平成30 年北海道胆振東部地震により、被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。

記録的な暑さに見舞われた今年の夏でしたが、夏のお疲れは出ていらっしゃらないでしょうか、お伺い申し上げます。また、先生方には、日頃より学会の運営にご理解とご協力を賜り心より感謝申し上げます。

さて、慶應義塾大学の創設者である福沢諭吉翁が「学問ノススメ」のなかで「実学」について述べていることは、ご承知のことと存じます。過日あるものの記事でこの実学についての議論を目に致しました。辞書をひも解くと(広辞苑・第五版)、1. 空理・空論でない、実践の学。実理の学。2. 実際に役立つ学問。応用を旨とする科学。法律学・医学・経済学・工学の類。とあるため、役に立たないものは学問ではないのか?という議論でした。曲がりなりにも、歯学を通し学問を生業としてきました小職は、興味本位に読み流しましたが、何か気になり、福沢翁が唱えた「実学」とは何かを調べてみたところ、最も簡単に理解出来る答えが、なんと慶應義塾大学の入学案内にありました。

" 自分の頭で考える" 学びへ 福澤は、「実学」に「サイヤンス」とフリガナをふりました。つまり「実学」とは、単なる実用の学ではなく「科学」のこと。問題を発見し、仮説を立てて検証し、結論を導いていくという、" 自分の頭で考える" プロセスに通じる「実証科学」のことを意味しています。以下、略

この説明から、福沢翁が唱えた実学が単に実利を求めることではないと安堵すると共に、「学問ノススメ」が書かれた時代背景を読み取ると、言葉の真の意味が理解できることも知りました。つまり、単に知っているだけということの不確かさ、危うさを学んだのです。

学問といえば、当学会は、1991 年に設立され、有病者という患者を対象にしたこれまでにない学際的領域にもかかわらず、学会名に象徴されるよう臨床を中心とした学術団体のため、これまで科学あるいは学問として未熟な団体として評価されて参りました。そのようなイメージを払拭するため、今春、有病者歯科医療に関する様々な課題について、客観的に集積された証拠(科学的根拠)に基づき解説した教科書「有病者歯科学」を上梓致しました。この作業は、これまでに経験した多くの臨床データーを集積し検証するという、まさに実証科学そのもので、福沢翁の言う実学(サイエンス)に他なりません。この教科書に掲載された検証結果は体系化された有病者歯科医療に関わる知見、知識であり、有病者歯科医療が学問となる礎になるものです。但し、有病者歯科医療が学問として深化するためには、単に知っているということだけでは、不確かで危ういものであることは、私の体験からも先にも述べたとおりです。

そこで、「知」について検索したところ、「知」とは単に知っているということ、すなわち、知識が意識のどこかに保存されていることを意味するもので、その「知」に「曰(いわく)」がついて、自分が知っているだけでなく、その知識の本質を見抜き、自分の意見として他人にきちんと説明できるということを意味する、とありました。これが事実であれば、有病者歯科学という実学を学び、その学問を基盤とした有病者歯科医療を実践する者として、単なる知識の習得のみならず、その真理を求め「智」を学び、日々の臨床に生かすことが、今われわれに求められていることではないでしょうか?この夏のある日、ふと思った次第です。

年惜しむ季節に

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

寒冷の候、先生方におかれましてはますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は会務に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

早いもので、今年も先生方それぞれの思いが残る一年が終わろうとしております。(一社)日本有病者歯科医療学会(以下、有病者歯科医療学会)における、この1年を振り返りますと、第26回有病者歯科医療学会学総会・学術大会(金沢市)が、大会史上初めて1,000名を超す参加者を得て成功裡に開催されたことは特筆すべきで、大会長の宮田 勝先生(石川県立中央病院 歯科口腔外科 科長・診療部長)には、心より敬意と感謝を申し上げる次第です。そして、この総会をもって新しい執行部がスタートし、以前にも増してスピード感をもって多くの事業に取り組み、具現化を目指しております。現在、重点的な事業としまして、1. 学会認定専門医制度の再構築(有病者歯科医療に関わる歯科衛生士の養成/学会認定制度の設立)、2. 診療ガイドラインの基盤確立と新たなガイドライン項目の作成、3. 学術教育セミナー・ハンズオンセミナーにおける大胆な企画構想、4. 日本歯科医師会と連携した在宅歯科医療に関する調査等、を推進しているところです。どうか、先生方のご理解とご協力を重ねてお願い申し上げる次第です。

有病者歯科医療の学問的基盤の確立は、当学会の存在意義に繋がるものであります。そこで、この数年有病者歯科医療に関わる教科書の作成を、学問的基盤確立の核心として捉え、取り組んで参りました。お陰様で、2018年春には「有病者歯科学」として上梓される予定となりました。この機会を緒とし、有病者医療に関する学問的根拠形成をますます深め、学術集団としての高見を目指したいと考えておりますので、宜しくお願い致します。また、教科書作成に関係された先生方には、ご多忙のところ、原稿の執筆ならびに編集等で大変なご苦労と協力を賜りましたこと、心よりお礼申し上げます。

終わりに、当学会の近未来について思い巡らせます。当学会の会員は、大学関係者(歯学部口腔外科・歯科麻酔、医学部歯科口腔外科)、病院歯科口腔外科、一般歯科(開業歯科)、その他(医師、看護師、歯科衛生士、研究者等)から構成され、それぞれの専門集団が代表として活躍されています。これは他の歯学における専門的学術団体とは異なる特徴で、本学会はまさに、(歯科)医療ネットワークの要となるものであり、現在社会が必要としている医療に不可欠な学術団体のひとつであります。われわれは社会からの負託に答えるためにも、裾野を広めつつ、社会に還元できる診療、研究、教育活動を実践し、進化し続けなければなりません。そのためには、時代そして社会が求める歯科医療と研究を洞察し、それに基づいた企画と実践力を備えた若き世代のリーダー育成が喫緊の課題であると、年惜しむ季節に老婆心ながらしみじみと感じている次第です。

末筆ながら、先生方の益々のご活躍と、来る年のご健勝とご多幸を祈念申し上げます。

繋 ぐ
― 伝受から伝授へ -

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

日頃より当学会の運営にあたりましては 、先生方をはじめ事務局の皆様方から暖かいご支援とご協力を賜り、心より感謝申しあげます。

本学会は1991年4月正式に学会として発足し、2010年12月には法人認可を受け、「全人的歯科医療」を基本的な考えとして据え、有病者歯科医療に関わる各種事業を運営して参りました。そのような中、私は4年前当学会理事長に推挙され、先生方のご指導のもと、次世代への橋渡し役として、その重責を担って参りました。そして、本年3月金沢で開催されました理事会において、三度理事長として推挙され、同日社員総会にて承認を得た後、3月3日付けで理事長に就任いたしました。学会発足から26年が経過し、社会構造も大きく変遷するなかで、当法人を取り巻く環境は決してやさしいものではありません。私は多くの課題を抱えているなか、超少子高齢社会における国民の歯科医療に対する要請に応えていくことが、当学会の最重要課題であると認識し、これまでの4年間学会運営に努めて参りました。この度、さらに次の2年間理事長という重責を担うことになり、改めてその職責の重さに身の引き締まる思いであります。

今後2年間の活動方針は、従前からの事業の継続と発展を基本として、以下の項目を推進していきたいと考えておりますが、ご意見等ございましたら事務局までいただきますようお願いいたします。

1. これまでの「行動目標」の一部を「結果目標」へ融合させる
  1)有病者歯科医療の知識とスキルを啓蒙する
   ①認定医制度の更なる整備
   ②学術教育セミナー
   ③スキルアップセミナーの実施(日本歯科医師会との連携協議)
2. 行動目標の更なる深化を目指す
  1) ガイドラインの策定
   ①既存のガイドラインの改定
  ※②疾患別ガイドラインの新規作成
  2) 高度な学術的基盤と最先端の医療水準の構築
   ①教科書の上梓
   ②専門分科会への加入申請
 ※3) 学会を構成する各部門の整備と活動の強化
  4) 日本歯科衛生士会との連携
   (有病者歯科医療学会認定歯科衛生士の創設)
 ※5) 学会の在り方ならびに人材の育成と確保
  6) その他

これらのうち、何点か新規(※下線部)の行動目標を設定致しました。先生方のご理解を賜り、一歩でも先に進めることが出来るよう取り組み、有病者歯科医療の発展と活性化に貢献したいと思います。

終わりに当たり、今後とも、先生方の思いに沿った学会運営を目指します。そして、先達から伝受されたものを次なる世代へ伝授する、つまり繋ぐことが、私が果たすべき大きな役割と理解し、新たなる(有病者)歯科医療の創設に努力する所存です。どうか、引き続き指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

年の瀬そして新年を迎えるにあたり
― 時の移ろいに想うこと ―

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

先生方におかれましては、日頃より学会運営にひとかたならぬご指導とご協力を賜り、誠にありがとうございます。お陰様で、(一社)日本有病者歯科医療学会(以下、学会)は順調に発展を続け、最近では会員の著明な増加がみられるなど、社会的にも評価の高まりがみられております。これもひとえに先生方のご尽力の賜物と心より感謝申し上げる次第です。

さて、年の瀬を迎えた今、私はこの1年間の出来事に思いを馳せながら、筆を走らせております。この時期は、恐らく先生方も想いはそれぞれ異なるものの、同様な思いで日々を過ごされているものと推察いたします。そして、このニュースレターが先生方のお手元に届くのは、時は移ろい、年も明けて生活の落ち着きが戻り、現執行部が2期目の最終段階を迎える頃だと存じます。
現執行部は、これまでの先達が作り上げられました大きな財産の下に、現在の社会環境に相応した事業を行動目標に挙げ、その具現化を目指して参りました。そこで、2期4年を終えるに当たり、これまでの活動状況についての総括と学会の近未来構想について述べさせて戴きます。

これまでに、われわれが掲げました行動目標は以下の通りですが、これらの項目をスピーディーに具現化することを目標に活動して参りました。お陰様で、多くの先生方、事務局のご尽力で、全ての項目で大きな進展がみられたものと考えております。

1、ガイドラインの策定
2、有病者歯科医療の知識とスキルを啓蒙する
 ①認定医制度の更なる整備
 ②学術教育セミナー
 ③スキルアップセミーの実施
3、高度な学術的基盤と最先端の医療水準の構築
4、日本歯科医師会との連携協議 
5、医科歯科連携の強化(25周年記念シンポジウムの開催)
6、歯科衛生士との連携(有病者歯科医療学会認定歯科衛生士の創設)
7、その他

これらについての、現状と今後の到達目標について記します。
1、2、につきましては、ご承知のとおり、既に実施されていますが、2、については、超高齢社会に伴う疾患構造の変化に対応すべく、さらなる深化を目指します。
3、有病者歯科医療の学術水準を担保するため、教科書を来年の早い時期に発刊することを目途に、現在原稿の校正に入りました。さらに、教科書の上梓後には、本書を基本に、安全で適切な有病者歯科医療体制構築のためのエビデンス作りを目指します。
4、日本歯科医師会と2-③をベースにした連携体制を構築致しました。今後は、医療    安全を含めた講演会とスキルアップセミナーを各県歯と連携のうえ実施し、社会構造の変化に対応可能な歯科医療の提供に、さらなる責務を果たしていく所存です。なお、学会認定医、専門医・指導医の先生方におかれましては、本事業の実施に当たりましては、特段のご協力をお願い致します
5、25周年記念事業として、2017年1月14日(土)医科歯科連携シンポジウムを(一 社)骨粗鬆症学会、(一社)骨代謝学会と連携し開催致します(詳細には、ホームペ ージをご参照ください)。なお、今回のシンポジウムを契機として、さらなる医科歯 科連携を深化させる仕組みを目指します。
6、(公社)日本歯科衛生士会(以下、歯科衛生士会)と協議のうえ、現在「有病者歯科 医療学会認定歯科衛生士」の創設へ向け、研修内容について検討中です。今年度中 には、一定の方向性を示し、歯科衛生士会と連携し、来年度実施を目指します。
7、社会が求めている歯科医師の養成に貢献できる学会として認知されるため、今われ われは何をすべきかを思料したうえで、方向性を類する学会と団体の在り方につい て検討致します。

以上、この4年間における行動目標に基づいた活動状況と今後の課題についてご報告申し上げました。現在、時代が我々の理念に追いつき、本学会はある意味で「時分の花」(風姿花伝・世阿弥)なのかも知れません。しかし、例えそうであるとしても、注目されることは悪いことではないと前向きに考え、この時期をチャンスと捉え、本学会が歯科医学、歯科医療のパラダイムシフトに大いに貢献するとともに、さらなる時の移ろいにも対応が可能な組織としてあり続けられよう、次世代に繋げていくことがわれわれの責務だと考えている今日この頃です。

では、先生方、良い年をお迎えください、そして、平成29年3月に金沢でお会いできますこと、楽しみしております。

再び春が来て想うこと

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

時の移ろいは早いもので、3月に開催された第25回(一社)日本有病者歯科医療学会総会・学術大会から、既に1か月半ほど経過し、美しい桜の花の日々から新緑の美しい季節となりました。幸いに、先の学術大会では参加者は700名を超し、成功裏に終えることができました。これもひとえに、大会長の日本大学松戸歯学部歯科麻酔学講座教授 渋谷 鑛先生ならびに教室員の先生方のご尽力と会員の先生方ならびに事務局のご協力の賜物と心より感謝申し上げる次第です。

さて、本学会は先達による先見の明により創造され、強い信念のもと歩み進んできたことはご承知の通りですが、今まさに時代がわれわれに追いつき、社会のニーズに対応可能な歯科関連学術団体のひとつに成長したと思うのは私だけではないと存じます。しかしながら、現在社会の進むスピードは速く、われわれが少しでも社会と向き合うことを怠れば、時代から取り残されていくことは必然です。これまで25年間に渡り先達に培われてきました本学会の使命を保ちつつ、変化し続ける社会に対応する組織作りこそが、現在われわれに与えられた使命であると考えております。

そこで、既に報告させていただいている今期における活動方針の進捗状況と先の総会で新たにご承認賜りました新たなる学会の方向性とその具現化に向けた活動につきましてご報告いたします。

行動目標
1.ガイドラインの策定
2.有病者歯科医療の知識とスキルを啓蒙する
  ①認定医制度の更なる整備
  ②学術教育セミナー
  ③スキルアップセミナーの実施
3.高度な学術的基盤と最先端の医療水準の構築
4.日本歯科医師会との連携協議
(新たに認められた行動目標)
5.医科歯科連携の強化(25周年記念シンポジウムの開催)
6.歯科衛生士との連携(有病者歯科医療学会認定歯科衛生士の創設)
7.その他

1.ガイドラインの策定につきましては、昨年3月「科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2015年改訂版」を刊行致しました。今後は、有病者歯科医療に関わる他のテーマにつきましても、ガイドラインを策定していきたいと考えております。

2.①今年度より、学会認定制度を認定医、専門医、指導医の3階建てとし、質の担保を保ちつつ、社会の要請に対応したシステムを構築いたしました。今後、高度な有病者歯科医療を担う人材育成と社会構造の変遷に伴う歯科医療環境の変化に対応可能な歯科医師の養成に努めます。
  ②学術教育セミナーは、2011年からこれまでに5回開催されてきておりますが、昨年開催されましたセミナーでは、大変嬉しいことにこれまでにない多数の応募者がありました。会場を急遽変更するなど対応致しましたが、すべての先生方のご希望に応えることができませんでした。ご迷惑お掛け致しました先生方に、深くお詫び申し上げますと共に、今年度はメインテーマを「ガイドラインを基本とした抗血栓療法患者・薬物関連顎骨壊死への歯科領域での対応」とし、大きな会場を用意し、多くの応募者にも対応できるよう準備しておりますので、よろしくお願いいたします。なお、内容の詳細は、ホームページをご参照願います。
  ③スキルアップセミナーは、後述する歯科医師会との連携を視野に、これまでに3回のセミナーを実施して参りました。希望者を募りますと、直ぐに満席になるなど、当初はその実施に些か不安がありましたが、その不安も完全に払拭され、われわれが考えている以上に、本学会の存在意義は高いものと実感させられました。今後さらに精度を高めるとともに、範囲を広げ実施していく予定です。

3.有病者歯科医療の学術的水準を担保するため、教科書の発刊に着手致しました。現在、出版社と学術的内容と執筆者の選定に取りかかっているところです。可能であれば、本年中に原稿の取り纏めを行い、来年中の発刊を目指します。さらに、この教科書を基本に最高水準の(安全で適切な有病者歯科)医療体制構築のためのエビデンス作りを開始いたします。

4.ハイリスク型歯科医療に対応可能な一般歯科医師の養成に、日本歯科医師会と連携し認定医制度やスキルアップセミナーを通して努力しています。今後も、日本歯科医師会ならびに日本歯科医学会との協議を続け、その精度を高めます。

5.学会創立25周年記念行事として、医科歯科連携シンポジウムを開催いたします。テーマとして、現在医科歯科連携が必要な疾患のひとつである「薬物療法に伴う顎骨壊死」を取り上げたいと考え、現在関連の医科系学会とご相談しているところです。内容が具体的になりましたら、出来るだけ早くお知らせいたしますので、よろしくお願いいたします。

6.予てからの懸案事項でありますが、学会といたしましては有病者歯科医療に対応可能な歯科衛生士の育成も喫緊の課題であると考えております。歯科衛生士会(学会)とも連携し、学会専門医制度との整合性を図りながら有病者歯科医療学会認定専門歯科衛生士の養成など早急に検討する所存です。

7.学会を構成する専門性の異なる団体の在り方について検討します。ここには6.で述べた歯科衛生士の在り方についても併せて検討致します。

以上、現在実施中の学会活動(概略)を記しました。可能な限り学会活動の可視化を進め、先生方からのご意見、ご批判をいただきながら会務に励んでいく所存です。そして、本学会が歯科医学・歯科医療の発展に寄与し、結果、国民の健康に貢献することの一翼を担っていきたいと心より願っているところです、どうか、一緒にがんばりましょう。

さらなる高みを目指して―ピンチをチャンスへ―

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

先生方におかれましては、日頃より(一社)日本有病者歯科医療学会(以下、学会)の活動にご理解とご協力を賜り、深く感謝申し上げます。お蔭様で本学会は発展を続けており、会員数も1,700名を超えるに至りました。それを専門領域別にみると、病院歯科、一般臨床医が占める割合が最も多くなり、社会環境の変化が反映していることが推察され、本学会が社会に果たすべき役割はますます大きくなるものと考えます。

さて、NHK朝の連続ドラマ「朝が来た」が、高視聴率を上げていると言われています。それは、幕末から明治、大正という激動の時代の中で、主人公が葛藤しながらも真っすぐに生き、困難を克服していく様を、主人公のみならずそれを支える周囲の人間模様とともに描いているものと聞いております。多くの視聴者は、様々な問題点を解決していくサクセスストーリーに共感し、沢山の拍手を送っているものと推察しますが、私は明治維新という大きく時代が変遷するなかで、それを乗り越えて新しい道を創造していくもの、その一方で大きな波に飲み込まれていくもの、などを描くことにより、われわれに様々なメッセージを発信しているのではないかとも考えています。

時代の変遷と言えば、嘗ては歯科医院に多くの患者が押し寄せていましたが、それも今は遠い昔となり、さらには歯科医院の数はコンビニエンスストアーよりも多い、などと揶揄されるようになりました。また、社会環境の変化とりわけ超少子高齢社会の到来は、医療構造にも大きな変化をもたらすと共に、2003年経団連により提唱された『第三の開国(TPP)』が、本年締結されたことは皆様ご承知の通りです。特に、この「第三の開国(TPP)」は、医療・介護の分野にも大きな影響をおよぼすものと考えられており、これらを勘案すると、歯科が置かれた現在の状況は、先に述べたテレビドラマにおける激動の時代背景と類似しているのではないでしょうか。

歯科がこの時代の変遷に伴う多くの問題点を克服することは、テレビドラマのように容易に可能となるものではありません。しかし、われわれは少なくとも大きな波に飲み込まれることなく、本学会先達のパイオニア精神を受け継ぎ、問題点と真摯に向き合い、困難を乗り越え新しい道を創造しなければなりません。そのひとつとして、超高齢社会におけるハイリスク型歯科医療への転換は、喫緊の課題です。しかも、この課題を解決するためには、従来の問題解決型の手法ではなく、現在の社会背景に相応した、イノベーション創出型でなければなりません。そこで、われわれは学会専門医制度をより充実させることにより、ハイリスク型歯科医療(有病者歯科医療)研修の場を広めることを決意し、同じ問題を共有する日本歯科医師会ならびに日本歯科医学会と連携し、新たな社会のニーズを創設するシステムを構築するために努力しています。

いずれにしましても、現在、歯科がおかれている状況は、社会的には必ずしも良い環境とは言えません。しかし、悪い点ばかりを嘆いていても仕方ありません。「肯定的な思考がモチベーションとエネルギーを高め、より良い結果を生み出す(Martin E.P. Seligman等)」と言われています。今こそ、有病者歯科医療の素晴らしい点や可能性に着目し、歯科界の更なる高みを目指そうではありませんか。

今こそが「ピンチはチャンス(Tough times bring opportunity)」なのです。

有病者歯科医療学会の新たなる旅立ちに向けて

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

月日の経つのは早いもので、私が理事長に就任して以来、早2年が経過いたしました。先生方には、その間、会務の運営にあたり多くのご指導、ご協力を賜りましたこと、心より感謝申し上げる次第です。そして、本年の役員改選にあたり、再び理事長職を拝命いたしましたことは、大変光栄であると共に、身の引き締まる思いであります。

今後2年間、引き続き(一社)日本有病者歯科医療学会(以下、有病者歯科医療学会)の発展に尽力して参りますので、よろしくお願いいたします。

さて、私はこの2年間、有病者歯科医療学会が置かれていた状況を、これまで目標としてきた有病者歯科医療の概念を実証する段階から、次なる段階へ入る時期と捉え、「新たなる有病者歯科医療の構築へ向けて」としての取り組みを進めてまいりました。

具体的には、先達の事業を継承するとともに、有病者歯科治療指針のひとつとしてガイドラインを策定や有病者歯科医療の知識とスキルを啓蒙するため認定医制度やスキルアップセミーなど、新たな環境を整備いたしました。そして、これらを基盤として、社会構造の変遷に伴う歯科医療の課題、特に超高齢社会における有病者歯科医療の在り方についての課題とその解決策を提供し、新しい歯科医療の展開を目指しているところです。

従いまして、これからの2年間はこの「新たなる歯科医療の構築」へ向け、さらなる挑戦をしていくことになります。そのためには、有病者歯科医療学会の学術的基盤の強化と人材の育成に努めるとともに、さまざまな異なる分野との連携を強化する必要があると考えます。幸いに、日本歯科医学会のご指導により日本歯科医師会との連携協議も始まっておりますので、有病者歯科医療学会のもつ知識・技術を活かし、歯科医療全体に有病者歯科医療が一般化する仕組みを構築したいと思います。

折しも、国の科学技術政策がさまざまな課題を解決するイノベーション創出型研究へ転換されたことは、ご承知のとおりです。その観点からも、われわれ有病者歯科医療学会の立場から、上記の課題解決に向けたプロジェクトを積極的に展開すべきと考えます。そして、そのためには,高度な学術的基盤と最先端の医療水準は絶対的な必要条件であることは言うまでもありません。先生方におかれましては、どうかこの点をご理解賜り、超高齢社会における歯科医療イノベーション創生の原動力となっていただきますようお願いいたします。

終わりにあたり、有病者歯科医療学会は有病者歯科医療を通じ、国民の健康維持・増進に貢献し、さらなる歯学の発展・向上を目指します。どうか、引き続き、学会活動に対するご理解、ご支援の程、重ねてよろしくお願い申し上げます。

この夏に想うこと

一般社団法人日本有病者歯科医療学会
理事長 今 井 裕

季夏の候、先生方におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
また、平素は学会運営につきまして、格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、昨年3月に理事長職を拝命し、先達の事業の継続に加え、新たな事業をいくつかご提案させて戴きましたところ、幸いにもご承認を得ることができました。

現在、それらの事業の具現化に向け関連委員会の先生方と努力しているところですので、その一端をご紹介いたします。

まず、最重要課題として位置付けております「更なる学会組織の充実」についてですが、現在の社会動態から勘案しますと、有病者歯科医療の裾野を広げていく必要があることは明白であり、われわれの学会が担う社会的責務であると認識しております。

そこで、現在、学会認定医制度を基盤としたリスクマネージメントに関する学会のサポート体制を確立し、その中で地域歯科医療の第一線で活躍されている先生方ならびに歯科衛生士の方々との連携を強めることにより、有病者歯科医療の充実を図り、結果として学会組織の発展に繋がるべくシステムの構築に努力しています。

具体的には、まず、有病者歯科医療を正しく理解して戴くために、学会に関する情報を全て開示しようとホームページのリニューアルに取り組みました。これにより、会員のみならず歯科医師会の先生方、そして、広くは国民との意思疎通が可能となり、広報活動の充実が図れます。また、新たなホームページには、各地域における学会認定医の存在を明確にするため、学会認定医マップを掲載し、有病者歯科医療に関するあらゆる点についてサポートが可能となる体制を作って参ります。さらに、従来から実施しています教育研修会のみならず、地域歯科医療とより密着した有病者歯科医療に関わるスキルアップセミナーを開催いたします。

このような事業の展開は、何よりもスピーディーに具現化することが肝要であります。

今後も、先生方のご協力を賜り、微力ながら有病者歯科医療に関する国民へ責務を果たしていきたいと考えておりますので、どうかご指導とご鞭撻のほどお願いいたします。

末筆ながら、先生方のますますのご活躍を祈念申し上げます。

2014年8月吉日

理事長に就任して

一般社団法人日本有病者歯科医療学会 理事長
獨協医科大学医学部 特任教授
今 井 裕

先生方におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。また、日頃は学会運営に多大なご協力を賜りまして感謝申し上げます。さて、2013年3月第22回(一社)日本有病者歯科医療学会社員総会にて新執行部が承認され、私がはからずも第4代目理事長職を拝命いたしました。自らがそのような任にないことを理解する程度の知恵は持ち合わせておりますので、大変恐縮するとともに光栄に存じ、ご推挙賜りました学会役員ならびに会員の諸先生方に厚くお礼申し上げる次第です。

本学会は今から22年前[1991年]、われわれの先達が将来到来するであろう高齢社会を見据え設立したことはご承知のとおりです。現在の状況を鑑みますと、今まさに時代がわれわれに追いついてきた感ありですが、その証としまして、この数年における会員数の増加は著しく、2013年3月現在の会員数は約1,200名を数え、学術大会の参加者も700名を超えるようになりました。

ここに歴代の理事長先生をはじめとする先人の卓越した先見の明に改めて敬意を払うととともに、今日の学会の盛隆が先輩方の並々ならぬご努力の賜物であることに重ねてお礼申し上げる次第です。

このようななか、私が理事長として学会運営に携わっていくわけですが、歴代理事長の先生方に習い、その様を踏襲していくことは当然であり、その上に新たなる時代に向けた方向性を示さなければいけないものと考えております。そこで、今後の具体的な学会運営に関する抱負について、若干述べさせていただきます。

今後の活動目標は、従前からの事業の継続と発展を基本としまして、以下の4項目を直近の重点目標にしていきたいと考えております。

  1. 1.更なる学会組織の充実

    今後の人口動態を考えると、現在のような大学・病院歯科のみで有病者歯科医療に対応することは困難であり、国民に対し十分な責任を果たすことができなくなることは明白です。その対応としては、有病者歯科医療の裾野を広げていく必要があり、地域歯科医療に従事されておられる先生方ならびに歯科衛生士の方々との協力が不可欠であると考えます。

    そこで、学会認定医制度を基盤としたリスクマネージメントに関する学会のサポート体制を確立し、その中で地域歯科医療の第一線で活躍されている先生方ならびに歯科衛生士の方々との連携を強めることにより、学会組織の充実を図りたいと考えております。本学会は、有病者歯科医療に関し国民へ責務を負っていると考えますので、喫緊の課題としてこの問題に取り組んでいきたいと思います。

  2. 2.学会認定医制度の更なる充実
    現在、医科では新たなる専門医制度への移行準備が進んでおり、将来的には、標榜科名にその制度が利用されることも考えられているようです。従来、医療制度の導入に際しては、医科が先行した後、それに準じ歯科に導入されてきた経緯がありますので、これからの情勢を注視しながら、まず当面は歯科医学会専門分科会への昇格に努力し、現行の制度化における専門医認定学会(厚労省認定)を目指したいと思います。
  3. 3.学会運営の更なる充実
    現状に合わせた各種委員会の見直しを行い、学会運営の機能的向上を図ります。また、次世代に学会をどのように繋いでいくか、真剣に考えなければいけない時期でもあります。
    変わることにより、時を無限に繋げることができることになるわけですので、有能な若手の先生を学会運営に登用し、学会運営の更なる充実を図りたいと存じます。
  4. 4.学術大会と教育研修会の更なる充実
    学術大会と教育研修会は、本学会の根源をなす事業活動であります。教育研修会には既に委員会が設立され、活発な活動が行われておりますが、学術大会の運営に関しましては学会長に一任してきた経緯があります。今後は、学術大会ならびに教育研修会の両者に共通した運営委員会(仮称)を設立し、その運営をサポートできるような体制を作り、活発な活動に繋がるようにしたいと思います。

いずれにしましても、今後会務運営を円滑に行うためには、先生方のご協力なくしては実践することはできません。私も誠心誠意努力する所存ですが、先生方におかれましては、これまでにも増してご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

末筆ながら、先生方の益々のご活躍と貴施設のご発展を祈念申し上げ、大変雑駁ではありますが、私の理事長就任のご挨拶とさせていただきます。

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